0 Comments

February 6, 2023

Read Miyazawa Kenji’s 注文の多い料理店 with Audio

Makoto+ Members, please click here to download your bonus content (Anki flashcard deck with all the vocabulary in the story + a printable PDF with furigana).

Miyazawa Kenji (宮沢(みやざわ) 賢治(けんじ)) lived from 1896-1933. He was a Japanese poet and novelist. He is famous for Night on the Galactic Railroad (銀河鉄道(ぎんがてつどう)の夜(よ)) a fantasy novel and the poem, 雨(あめ)ニモマケズ (see here for the TJP lesson page).


About The Restaurant with Many Orders

Today's short story, 注文(ちゅうもん)の多(おお)い料理店(りょうりてん) (The Restaurant with Many Orders) is a fun fantasy/horror/comedy. It's about two gentlemen in Western-style clothing who go hunting in the woods. They discover a Western-style restaurant in the middle of the woods. Hungry, the two decide to go in. 


The Title

Let's examine the Japanese title: 注文(ちゅうもん)の多(おお)い料理店(りょうりてん).  The order is the opposite of English:

In English we would add the modifiers after the noun (usually): The restaurant with many orders.

But in Japanese, the modifiers comes before the noun (usually). One trick for translating many Japanese sentences is to grab the topic (the noun before the は) and then jump to the end and work back. So, "Restaurant 料理店(りょうりてん) with many 多(おお)い orders 注文(ちゅうもん)."

The title is a wordplay. 

注文(ちゅうもん)の多(おお)い can mean “many orders” or “demanding; strict; difficult”. In English “order” can mean “order at a restaurant” or “a command.” The Japanese 注文(ちゅうもん) can also imply these meanings.


How to Use this Page

Japanese and English

Read the Japanese while listening to the story. Toggle the English to check your understanding. We are using the English translation found at Wikisource. The name of the translator isn't listed, but it is released under the Creative Commons Attribution-ShareAlike license.

Please note the English isn't a word-for-word translation, but it should be close enough to check your reading comprehension.

Furigana Support

I added furigana but we will need to check the accuracy. Simply mouse over (or tap on mobile) to see the furigana. It should be close, but if you find something off (compared with the sound file), please let me know in the comments.

Anki Flashcard Deck (Member benefit)

I also created an Anki deck of the main vocabulary. This is available for all Makoto+ members. If you find the Japanese difficult, it would be a good idea to spend a few days or weeks with the Anki deck before tackling the story. If you are a member, please click here to download the Anki deck. If you aren't a member, please consider becoming one to not only get tons of resources for helping you learn Japanese, but to also support what we are doing with TheJapanesePage.com.


Let's Read The Story


Audio controls "float" as you scroll so you can easily pause while reading the transcript.

  • Japanese with English
  • Japanese Only
  • ENGLISH Only
  • Sleep Story Version

宮沢(みやざわ) 賢治(けんじ)

注文(ちゅうもん)の多(おお)い料理店(りょうりてん)

 二人(ふたり)の若(わか)い紳士(しんし)が、すっかりイギリスの兵隊(へいたい)のかたちをして、ぴかぴかする鉄砲(てっぽう)をかついで、白熊(しろくま)のような犬(いぬ)を二(に)疋(ひき)つれて、だいぶ山奥(やまおく)の、木(こ)の葉(は)のかさかさしたとこを、こんなことを云(い)いながら、あるいておりました。

English

「ぜんたい、ここらの山(やま)は怪(け)しからんね。鳥(とり)も獣(けもの)も一疋(いっぴき)も居(い)やがらん。なんでも構(かま)わないから、早(はや)くタンタアーンと、やって見(み)たいもんだなあ。」

English

「鹿(しか)の黄(き)いろな横(よこ)っ腹(ぱら)なんぞに、お見舞(みまい)もうしたら、ずいぶん痛快(つうかい)だろうねえ。くるくるまわって、それからどたっと倒(たお)れるだろうねえ。」

English

 それはだいぶの山奥(やまおく)でした。案内(あんない)してきた専門(せんもん)の鉄砲打(てっぽうう)ちも、ちょっとまごついて、どこかへ行(い)ってしまったくらいの山奥(やまおく)でした。

English

 それに、あんまり山(やま)が物凄(ものすご)いので、その白熊(しろくま)のような犬(いぬ)が、二疋(にひき)いっしょにめまいを起(お)こして、しばらく吠(うな)って、それから泡(あわ)を吐(は)いて死(し)んでしまいました。

English

「じつにぼくは、二千四百円(にせんよんひゃくえん)の損害(そんがい)だ」と一人(ひとり)の紳士(しんし)が、その犬(いぬ)の眼(ま)ぶたを、ちょっとかえしてみて言(い)いました。

English

「ぼくは二千八百円(にせんはっぴゃくえん)の損害(そんがい)だ。」と、もひとりが、くやしそうに、あたまをまげて言(い)いました。

English

 はじめの紳士(しんし)は、すこし顔(かお)いろを悪(わる)くして、じっと、もひとりの紳士(しんし)の、顔(かお)つきを見(み)ながら云(い)いました。

English

「ぼくはもう戻(もど)ろうとおもう。」

English

「さあ、ぼくもちょうど寒(さむ)くはなったし腹(はら)は空(す)いてきたし戻(もど)ろうとおもう。」

English

「そいじゃ、これで切(き)りあげよう。なあに戻(もど)りに、昨日(きのう)の宿屋(やどや)で、山鳥(やまどり)を拾円(じゅうえん)も買(か)って帰(かえ)ればいい。」

English

「兎(うさぎ)もでていたねえ。そうすれば結局(けっきょく)おんなじこった。では帰(かえ)ろうじゃないか」

English

 ところがどうも困(こま)ったことは、どっちへ行(い)けば戻(もど)れるのか、いっこうに見当(けんとう)がつかなくなっていました。

English

 風(かぜ)がどうと吹(ふ)いてきて、草(くさ)はざわざわ、木(こ)の葉(は)はかさかさ、木(き)はごとんごとんと鳴(な)りました。

English

「どうも腹(はら)が空(す)いた。さっきから横(よこ)っ腹(ぱら)が痛(いた)くてたまらないんだ。」

English

「ぼくもそうだ。もうあんまりあるきたくないな。」

English

「あるきたくないよ。ああ困(こま)ったなあ、何(なに)かたべたいなあ。」

English

「たべたいもんだなあ」

English

 二人(ふたり)の紳士(しんし)は、ざわざわ鳴(な)るすすきの中(なか)で、こんなことを云(い)いました。

English

 その時(とき)ふとうしろを見(み)ますと、立派(りっぱ)な一軒(いっけん)の西洋造(せいようづく)りの家(いえ)がありました。

English

 そして玄関(げんかん)には

English

RESTAURANT
西洋料理店(せいようりょうりてん)
WILDCAT HOUSE
山猫軒(やまねこけん)

という札(ふだ)がでていました。

English

「君(きみ)、ちょうどいい。ここはこれでなかなか開(ひら)けてるんだ。入(はい)ろうじゃないか」

English

「おや、こんなとこにおかしいね。しかしとにかく何(なに)か食事(しょくじ)ができるんだろう」

English

「もちろんできるさ。看板(かんばん)にそう書(か)いてあるじゃないか」

English

「はいろうじゃないか。ぼくはもう何(なに)かたべたくて倒(たお)れそうなんだ。」

English

 二人(ふたり)は玄関(げんかん)に立(た)ちました。玄関(げんかん)は白(しろ)い瀬戸(せと)の煉瓦(れんが)で組(く)んで、実(じつ)に立派(りっぱ)なもんです。

English

 そして硝子(がらす)の開(ひら)き戸(ど)がたって、そこに金文字(きんもじ)でこう書(か)いてありました。

English


「どなたもどうかお入(はい)りください。決(けっ)してご遠慮(えんりょ)はありません」

English


 二人(ふたり)はそこで、ひどくよろこんで言(い)いました。

English

「こいつはどうだ、やっぱり世(よ)の中(なか)はうまくできてるねえ、きょう一日(いちにち)なんぎしたけれど、こんどはこんないいこともある。このうちは料理店(りょうりてん)だけれどもただでご馳走(ちそう)するんだぜ。」

English

「どうもそうらしい。決(けっ)してご遠慮(えんりょ)はありませんというのはその意味(いみ)だ。」

English

 二人(ふたり)は戸(と)を押(お)して、なかへ入(はい)りました。そこはすぐ廊下(ろうか)になっていました。その硝子戸(がらすど)の裏側(うらがわ)には、金文字(きんもじ)でこうなっていました。

English


「ことに肥(ふと)ったお方(かた)や若(わか)いお方(かた)は、大歓迎(だいかんげい)いたします」

English


 二人(ふたり)は大歓迎(だいかんげい)というので、もう大(おお)よろこびです。

English

「君(きみ)、ぼくらは大歓迎(だいかんげい)にあたっているのだ。」

English

「ぼくらは両方兼(りょうほうか)ねてるから」

English

 ずんずん廊下(ろうか)を進(すす)んで行(い)きますと、こんどは水(みず)いろのペンキ塗(ぬ)りの扉(とびら)がありました。

English

「どうも変(へん)な家(うち)だ。どうしてこんなにたくさん戸(と)があるのだろう。」

English

「これはロシア式(しき)だ。寒(さむ)いとこや山(やま)の中(なか)はみんなこうさ。」

English

 そして二人(ふたり)はその扉(とびら)をあけようとしますと、上(うえ)に黄(き)いろな字(じ)でこう書(か)いてありました。

English


  「当軒(とうけん)は注文(ちゅうもん)の多(おお)い料理店(りょうりてん)ですからどうかそこはご承知(しょうち)ください」

English


「なかなかはやってるんだ。こんな山(やま)の中(なか)で。」

English

「それあそうだ。見(み)たまえ、東京(とうきょう)の大(おお)きな料理屋(りょうりや)だって大通(おおどお)りにはすくないだろう」

English

 二人(ふたり)は云(い)いながら、その扉(とびら)をあけました。するとその裏側(うらがわ)に、

English


「注文(ちゅうもん)はずいぶん多(おお)いでしょうがどうか一々(いちいち)こらえて下(くだ)さい。」

English


「これはぜんたいどういうんだ。」

English

ひとりの紳士(しんし)は顔(かお)をしかめました。

English

「うん、これはきっと注文(ちゅうもん)があまり多(おお)くて支度(したく)が手間取(てまど)るけれどもごめん下(くだ)さいと斯(こ)ういうことだ。」

English

「そうだろう。早(はや)くどこか室(へや)の中(なか)にはいりたいもんだな。」

English

「そしてテーブルに座(すわ)りたいもんだな。」

English

 ところがどうもうるさいことは、また扉(とびら)が一(ひと)つありました。そしてそのわきに鏡(かがみ)がかかって、その下(した)には長(なが)い柄(え)のついたブラシが置(お)いてあったのです。

English

 扉(とびら)には赤(あか)い字(じ)で、

English


「お客(きゃく)さまがた、ここで髪(かみ)をきちんとして、それからはきものの泥(どろ)を落(おと)してください。」

English


と書(か)いてありました。

English

「これはどうも尤(もっと)もだ。僕(ぼく)もさっき玄関(げんかん)で、山(やま)のなかだとおもって見(み)くびったんだよ」

English

「作法(さほう)の厳(きび)しい家(いえ)だ。きっとよほど偉(えら)い人(ひと)たちが、たびたび来(く)るんだ。」

English

 そこで二人(ふたり)は、きれいに髪(かみ)をけずって、靴(くつ)の泥(どろ)を落(おと)しました。

English

 そしたら、どうです。ブラシを板(いた)の上(うえ)に置(お)くや否(いな)や、そいつがぼうっとかすんで無(な)くなって、風(かぜ)がどうっと室(へや)の中(なか)に入(はい)ってきました。

English

 二人(ふたり)はびっくりして、互(たがい)によりそって、扉(とびら)をがたんと開(あ)けて、次(つぎ)の室(へや)へ入(はい)って行(い)きました。早(はや)く何(なに)か暖(あたたか)いものでもたべて、元気(げんき)をつけて置(お)かないと、もう途方(とほう)もないことになってしまうと、二人(ふたり)とも思(おも)ったのでした。

English

 扉(とびら)の内側(うちがわ)に、また変(へん)なことが書(か)いてありました。

English


「鉄砲(てっぽう)と弾丸(たま)をここへ置(お)いてください。」

English


 見(み)るとすぐ横(よこ)に黒(くろ)い台(だい)がありました。

English

「なるほど、鉄砲(てっぽう)を持(も)ってものを食(く)うという法(ほう)はない。」

English

「いや、よほど偉(えら)いひとが始終(しじゅう)来(き)ているんだ。」

English

 二人(ふたり)は鉄砲(てっぽう)をはずし、帯皮(おびかわ)を解(と)いて、それを台(だい)の上(うえ)に置(お)きました。 また黒(くろ)い扉(とびら)がありました。

English


「どうか帽子(ぼうし)と外套(がいとう)と靴(くつ)をおとり下(くだ)さい。」

English


「どうだ、とるか。」

English

「仕方(しかた)ない、とろう。たしかによっぽどえらいひとなんだ。奥(おく)に来(き)ているのは」

English

 二人(ふたり)は帽子(ぼうし)とオーバーコートを釘(くぎ)にかけ、靴(くつ)をぬいでぺたぺたあるいて扉(とびら)の中(なか)にはいりました。

English

 扉(とびら)の裏側(うらがわ)には、

English


「ネクタイピン、カフスボタン、眼鏡(めがね)、財布(さいふ)、その他金物類(たかなものるい)、ことに尖(とが)ったものは、みんなここに置(お)いてください」

English


と書(か)いてありました。扉(とびら)のすぐ横(よこ)には黒塗(くろぬ)りの立派(りっぱ)な金庫(きんこ)も、ちゃんと口(くち)を開(あ)けて置(お)いてありました。鍵(かぎ)まで添(そ)えてあったのです。

English

「ははあ、何(なに)かの料理(りょうり)に電気(でんき)をつかうと見(み)えるね。金気(かなけ)のものはあぶない。ことに尖(とが)ったものはあぶないと斯(こ)う云(い)うんだろう。」

English

「そうだろう。して見(み)ると勘定(かんじょう)は帰(かえ)りにここで払(はら)うのだろうか。」

English

「どうもそうらしい。」

English

「そうだ。きっと。」

English

 二人(ふたり)はめがねをはずしたり、カフスボタンをとったり、みんな金庫(きんこ)のなかに入(い)れて、ぱちんと錠(じょう)をかけました。

English

 すこし行(い)きますとまた扉(と)があって、その前(まえ)に硝子(がらす)の壺(つぼ)が一(ひと)つありました。扉(とびら)には斯(こ)う書(か)いてありました。

English


「壺(つぼ)のなかのクリームを顔(かお)や手足(てあし)にすっかり塗(ぬ)ってください。」

English


 みるとたしかに壺(つぼ)のなかのものは牛乳(ぎゅうにゅう)のクリームでした。

English

「クリームをぬれというのはどういうんだ。」

English

「これはね、外(そと)がひじょうに寒(さむ)いだろう。室(へや)のなかがあんまり暖(あたたか)いとひびがきれるから、その予防(よぼう)なんだ。どうも奥(おく)には、よほどえらいひとがきている。こんなとこで、案外(あんがい)ぼくらは、貴族(きぞく)とちかづきになるかも知(し)れないよ。」

English

 二人(ふたり)は壺(つぼ)のクリームを、顔(かお)に塗(ぬ)って手(て)に塗(ぬ)ってそれから靴下(くつした)をぬいで足(あし)に塗(ぬ)りました。それでもまだ残(のこ)っていましたから、それは二人(ふたり)ともめいめいこっそり顔(かお)へ塗(ぬ)るふりをしながらたべました。

English

 それから大急(おおいそ)ぎで扉(とびら)をあけますと、その裏側(うらがわ)には、

English


「クリームをよく塗(ぬ)りましたか、耳(みみ)にもよく塗(ぬ)りましたか、」

English


と書(か)いてあって、ちいさなクリームの壺(つぼ)がここにも置(お)いてありました。

English

「そうそう、ぼくは耳(みみ)には塗(ぬ)らなかった。あぶなく耳(みみ)にひびを切(き)らすとこだった。ここの主人(しゅじん)はじつに用意(ようい)周到(しゅうとう)だね。」

English

「ああ、細(こま)かいとこまでよく気(き)がつくよ。ところでぼくは早(はや)く何(なに)かたべたいんだが、どうも斯(こ)うどこまでも廊下(ろうか)じゃ仕方(しかた)ないね。」

English

 するとすぐその前(まえ)に次(つぎ)の戸(と)がありました。

English


「料理(りょうり)はもうすぐできます。十五分(じゅうごふん)とお待(ま)たせはいたしません。すぐたべられます。早(はや)くあなたの頭(あたま)に瓶(びん)の中(なか)の香水(こうすい)をよく振(ふ)りかけてください。」

English


 そして戸(と)の前(まえ)には金(きん)ピカの香水(こうすい)の瓶(びん)が置(お)いてありました。

English

 二人(ふたり)はその香水(こうすい)を、頭(あたま)へぱちゃぱちゃ振(ふ)りかけました。

English

 ところがその香水(こうすい)は、どうも酢(す)のような匂(におい)がするのでした。

English

「この香水(こうすい)はへんに酢(す)くさい。どうしたんだろう。」

English

「まちがえたんだ。下女(げじょ)が風邪(かぜ)でも引(ひ)いてまちがえて入(い)れたんだ。」

English

 二人(ふたり)は扉(とびら)をあけて中(なか)にはいりました。

English

 扉(とびら)の裏側(うらがわ)には、大(おお)きな字(じ)で斯(こ)う書(か)いてありました。

English

「いろいろ注文(ちゅうもん)が多(おお)くてうるさかったでしょう。お気(き)の毒(どく)でした。

English

 もうこれだけです。どうかからだ中(じゅう)に、壺(つぼ)の中(なか)の塩(しお)をたくさんよくもみ込(こ)んでください。」

English

 なるほど立派(りっぱ)な青(あお)い瀬戸(せと)の塩壺(しおつぼ)は置(お)いてありましたが、こんどというこんどは二人(ふたり)ともぎょっとしてお互にクリームをたくさん塗(ぬ)った顔(かお)を見合(みあわ)せました。

English

「どうもおかしいぜ。」

English

「ぼくもおかしいとおもう。」

English

「沢山(たくさん)の注文(ちゅうもん)というのは、向(むこ)うがこっちへ注文(ちゅうもん)してるんだよ。」

English

「だからさ、西洋料理店(せいようりょうりてん)というのは、ぼくの考(かんが)えるところでは、西洋料理(せいようりょうり)を、来(き)た人(ひと)にたべさせるのではなくて、来(き)た人(ひと)を西洋料理(せいようりょうり)にして、食(た)べてやる家(うち)とこういうことなんだ。これは、その、つ、つ、つ、つまり、ぼ、ぼ、ぼくらが……。」がたがたがたがた、ふるえだしてもうものが言(い)えませんでした。

English

「その、ぼ、ぼくらが、……うわあ。」がたがたがたがたふるえだして、もうものが言(い)えませんでした。

English

「遁(に)げ……。」がたがたしながら一人(ひとり)の紳士(しんし)はうしろの戸(と)を押(お)そうとしましたが、どうです、戸(と)はもう一分(いちぶ)も動(うご)きませんでした。

English

 奥(おく)の方(ほう)にはまだ一枚扉(いちまいとびら)があって、大(おお)きなかぎ穴(あな)が二(ふた)つつき、銀(ぎん)いろのホークとナイフの形(かたち)が切(き)りだしてあって、

English


「いや、わざわざご苦労(くろう)です。大(たい)へん結構(けっこう)にできました。さあさあおなかにおはいりください。」

English


と書(か)いてありました。おまけにかぎ穴(あな)からはきょろきょろ二(ふた)つの青(あお)い眼玉(めだま)がこっちをのぞいています。

English

「うわあ。」がたがたがたがた。

English

「うわあ。」がたがたがたがた。 

English

ふたりは泣(な)き出(だ)しました。 

English

すると戸(と)の中(なか)では、こそこそこんなことを云(い)っています。

English

「だめだよ。もう気(き)がついたよ。塩(しお)をもみこまないようだよ。」

English

「あたりまえさ。親分(おやぶん)の書(か)きようがまずいんだ。あすこへ、いろいろ注文(ちゅうもん)が多(おお)くてうるさかったでしょう、お気(き)の毒(どく)でしたなんて、間抜(まぬ)けたことを書(か)いたもんだ。」

English

「どっちでもいいよ。どうせぼくらには、骨(ほね)も分(わ)けて呉(く)れやしないんだ。」

English

「それはそうだ。けれどももしここへあいつらがはいって来(こ)なかったら、それはぼくらの責任(せきにん)だぜ。」

English

「呼(よ)ぼうか、呼(よ)ぼう。おい、お客(きゃく)さん方(かた)、早(はや)くいらっしゃい。いらっしゃい。いらっしゃい。お皿(さら)も洗(あら)ってありますし、菜(な)っ葉(ぱ)ももうよく塩(しお)でもんで置(お)きました。あとはあなたがたと、菜(な)っ葉(ぱ)をうまくとりあわせて、まっ白(しろ)なお皿(さら)にのせるだけです。はやくいらっしゃい。」

English

「へい、いらっしゃい、いらっしゃい。それともサラドはお嫌(きら)いですか。そんならこれから火(ひ)を起(おこ)してフライにしてあげましょうか。とにかくはやくいらっしゃい。」

English

 二人(ふたり)はあんまり心(こころ)を痛(いた)めたために、顔(かお)がまるでくしゃくしゃの紙屑(かみくず)のようになり、お互(たがい)にその顔(かお)を見合(みあわ)せ、ぶるぶるふるえ、声(こえ)もなく泣(な)きました。

English

 中(なか)ではふっふっとわらってまた叫(さけ)んでいます。

English

「いらっしゃい、いらっしゃい。そんなに泣(な)いては折角(せっかく)のクリームが流(なが)れるじゃありませんか。へい、ただいま。じきもってまいります。さあ、早(はや)くいらっしゃい。」

English

「早(はや)くいらっしゃい。親方(おやかた)がもうナフキンをかけて、ナイフをもって、舌(した)なめずりして、お客(きゃく)さま方(がた)を待(ま)っていられます。」

English

 二人(ふたり)は泣(な)いて泣(な)いて泣(な)いて泣(な)いて泣(な)きました。

English

 そのときうしろからいきなり、「わん、わん、ぐゎあ。」という声(こえ)がして、あの白熊(しろくま)のような犬(いぬ)が二(に)疋(ひき)、扉(とびら)をつきやぶって室(へや)の中(なか)に飛び込(こ)んできました。鍵穴(かぎあな)の眼玉(めだま)はたちまちなくなり、犬(いぬ)どもはううとうなってしばらく室(へや)の中(なか)をくるくる廻(まわ)っていましたが、また一声(ひとこえ)「わん。」と高(たか)く吠(ほ)えて、いきなり次(つぎ)の扉(とびら)に飛(と)びつきました。戸(と)はがたりとひらき、犬(いぬ)どもは吸(す)い込(こ)まれるように飛(と)んで行(い)きました。

English

 その扉(とびら)の向うのまっくらやみのなかで、「にゃあお、くゎあ、ごろごろ。」という声(こえ)がして、それからがさがさ鳴(な)りました。

English

 室(へや)はけむりのように消(き)え、二人(ふたり)は寒(さむ)さにぶるぶるふるえて、草(くさ)の中(なか)に立(た)っていました。

English

 見(み)ると、上着(うわぎ)や靴(くつ)や財布(さいふ)やネクタイピンは、あっちの枝(えだ)にぶらさがったり、こっちの根(ね)もとにちらばったりしています。風(かぜ)がどうと吹(ふ)いてきて、草(くさ)はざわざわ、木(こ)の葉(は)はかさかさ、木(き)はごとんごとんと鳴(な)りました。

English

 犬(いぬ)がふうとうなって戻(もど)ってきました。

English

 そしてうしろからは、「旦那(だんな)あ、旦那(だんな)あ、」と叫(さけ)ぶものがあります。

English

 二人(ふたり)は俄(にわ)かに元気(げんき)がついて「おおい、おおい、ここだぞ、早(はや)く来(こ)い。」と叫(さけ)びました。

English

 簔帽子(みのぼうし)をかぶった専門(せんもん)の猟師(りょうし)が、草(くさ)をざわざわ分(わ)けてやってきました。

English

 そこで二人(ふたり)はやっと安心(あんしん)しました。

English

 そして猟師(りょうし)のもってきた団子(だんご)をたべ、途中(とちゅう)で十円(じゅうえん)だけ山鳥(やまどり)を買(か)って東京(とうきょう)に帰(かえ)りました。

English

 しかし、さっき一(いっ)ぺん紙(かみ)くずのようになった二人(ふたり)の顔(かお)だけは、東京(とうきょう)に帰(かえ)っても、お湯(ゆ)にはいっても、もうもとのとおりになおりませんでした。

English

Makoto+ Members, click here to download all the sound files and an Anki flashcard deck just for this lesson. Practice makes perfect!

Sharing is caring!

{"email":"Email address invalid","url":"Website address invalid","required":"Required field missing"}
Complete Beginner Bundle — two bundles in one (Beri-Beri Shoshinsha + JLPT N5) for $49
The Complete Beginner Bundle

Ready for the next step?

The Complete Beginner Bundle

Everything to go from hiragana to JLPT N5 - 23 ebooks, 2,000+ audio files, Anki decks & app content, with free lifetime updates.

$49 $129 - save $80

Get the Bundle ->
Prefer to explore first? Join Makoto+ free - no credit card ->
>